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2-エチル-1-ヘキサノールによるシックビル症候群の解明

上島 通浩 教授(名古屋市立大学大学院医学研究科)

概要

 室内濃度指針値未設定である2-エチル-1-ヘキサノール(2E1H)とシックビル症状との関連については未解明な部分が多い。

 本研究では、①文献による情報収集、②名古屋市内の建築物における室内2E1H濃度の実態調査、③マウスを用いた濃度段階別吸入曝露実験を行った。①については、最近10年間に2E1Hの室内濃度の実態および発生源に関する研究報告が増えていることが明らかとなった。②に関しては、築6年のビル16部屋でVOC濃度の測定を行った結果、幾何平均値(幾何標準偏差)は213 (1.9) µg/m3であった。また、TVOC濃度に占める2E1H の比は61%に達し、2E1H が主要な汚染VOCである建物の存在が確認された。③に関しては、雄マウスに0, 20, 50, 150 ppm の2E1H を7日間または3ヵ月間吸入させる実験を行い、曝露終了後鼻粘膜を摘出、10%中性緩衝ホルマリン液で固定後、脱灰、パラフィン切片を作成した。HE染色及び白血球マーカーCD45、リンパ球マーカーCD3、好中球エラスターゼの免疫染色を行い、鏡検した。

 その結果、7日間曝露後に、20、50、150 ppm曝露群で濃度依存的に鼻腔嗅上皮の構成細胞の減少、好中球の浸潤が見られた。一方、3ヵ月間曝露後の50、150 ppm曝露の嗅上皮には、白血球浸潤(主にリンパ球)が見られ、細胞浸潤は粘膜固有層にまで達しているのが観察された。今回の実験では、曝露早期である7日後にみられた好中球の浸潤が3カ月後にはリンパ球中心に変わり、炎症の進展が示唆された。

 2E1H曝露による鼻の不快感、刺激性等はヒトのシックビル症状の1つであり、本研究でみられた所見との関連が示唆される。

 また、嗅神経の神経科学的な解析の必要性が考えられた。

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