2024.05.18調査研究

BEMSを活用した建築物環境衛生管理手法の再考

研究代表者:海塩 渉(東京工業大学)

本研究では、通常空調設備の自動制御のために計測されているBEMSデータ(温度、相対湿度、CO2濃度)の建築物環境衛生管理への活用可能性を検討するものである。そのため、BEMSを導入している3棟のオフイスビルを対象に、温度、湿度、CO2濃度の連続測定データロガーを設置し、同時にBEMSデータ収集を依頼した。冷房期のデータ分析の結果、①温度は居住域と壁面、還気ダクトに設置されたBEMSセンサで近しい値を取ること、②相対湿度はセンサの精度や個体差等の影響によって一貫した結果が得られないこと、③CO2濃度は空間的に大きく離れた還気ダクトに設置されている場合でも居住域の値と良好な相関関係を示すことが明らかになった。
以上より、温度とCO2濃度については空気環境管理への活用可能性が示唆されたが、相対湿度の活用は難しく、同時にBEMSセンサで通常測定されることがない一酸化炭素や気流等の測定が必要であることを考盧すると、人的コストの削減に繋げることは現段階では難しい。しかし、従来の午前午後のスポット測定では得られない、時間的解像度の高いデータが得られるというBEMSの長所は積極的に活用すべきである。これまでのように「基準を逸脱しているか否か」で空気環境の良し悪しを判断するだけではなく、「どれだけの時間、基準を逸脱しているか」というグラデーションで空気環境を評価することは、建築物衛生法の本来の目的でもある「公衆衛生の向上及び増進」に資する重要な取り組みになると考えられる。

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