2020.05.14調査研究
個別空調における衛生管理の実態調査(1年目)
研究指導員:鍵直樹(東京工業大学環境・社会理工学院建築学系 准教授)
事務所建築物で使用されている空調方式には中央方式(セントラル空調)と個別方式(ビルマルチ空調)の二通りがある。セントラル空調は建築物衛生法では法制制定当初から建築物環境衛生管理基準(管理基準)に適合する維持管理が求められている。一方、ビルマルチ空調は熱源と空気調和機を一体化・小型化した個別空調機であり、室内機を居室天井裏に分散配置して部屋ごとに空調する方式であり、「居室利用者が24時間自由に空調できる」「ゾーニングなど細かい調整不要」などメリットが大きく、かつては中小ビルで採用されていたが、最近では高効率のビルマルチ空調が開発され、大型ビルでもビルマルチが採用されるようになった。しかし、建築物衛生法施行令等の一部改正が2003年に行われ、ビルマルチについても管理基準を満足する維持管理が求められた。近年、建築物衛生法における空気環境の不適率は温度ならびにCO2濃度が増加傾向にあり、ビルマルチによる維持管理の不適が原因の一つではないかと推察されている。
本調査研究ではビルマルチ利用建築物の衛生実態の現状ならび管理手法のあり方について検討を行った。問題点等抽出のため、「個別空調の運転・空環境測定の実施・空調設備(ファン・フィルタ・熱交換器・加湿装置・ドレンパン)の点検ならびに清掃の実施状況・具体的な方法・管理に関する意識 等」についてアンケートを実施した。また実態調査の協力可の施設を対象に、冬期のホルムアルデヒドを除く空気環境測定項目6項目について測定を行った。
アンケートは26件の回収(回答率34%)であった。個別空調は中小規模建築物での利用が多いと予想していたが、延床面積10,000㎡以上の建築物でも10件で利用されていた。換気装置の設置は特定建築物では全熱交換器や外調機との回答が多かった。一方、3,000㎡未満の建築物では排気ファンによる換気が多かった。装置の維持管理については管理基準の「空気調和設備に関する衛生上必要な措置」に示される頻度で行われていないものがほとんどであった。
冬期の実態調査では連続測定結果から、温度ならびに相対湿度で基準を超過する例が多く見られた。特に3,000㎡未満の建築物で不適の傾向が大きかった。温度については、早めに室内を暖めようと温度設定を上げた結果と思われる。相対湿度については、加湿が行われていないため20%を下回る例もあり、冬期だけでなく、夏期や中間期についても実態を把握する必要があるとのことで継続調査を実施することとした。