2019.05.14調査研究

空気調和設備における微生物汚染による健康影響と対策に関する調査研究

研究指導員:柳 宇(工学院大学 建築学部 教授)

 建築物衛生法省令には空気調和設備に関する衛生上必要な措置が規定されており、加湿器および排水受けも微生物汚染による健康影響の観点から定期点検および必要に応じた清掃が義務づけられている。加湿装置の適正な運転は建築物内の相対湿度に影響を及ぼすため、建築物衛生管理上、重要事項である。しかし、誤った管理手法による加湿装置や排水受けの微生物汚染の報告例もある。

 そこで、本研究では近年特定建築物でも導入が増加している滴下浸透式加湿装置に着目し、1シーズンの稼働による加湿装置の衛生状況調査として、加湿モジュールやドレンパンの汚れ状況について微生物を指標とした調査を試みた。また、加湿装置の稼働によって、装置内が微生物で汚染され、汚染に伴う微生物由来揮発性有機化合物(Microbial Volatile Organic Compounds; MVOC)の発生や室内空気質への影響1)が懸念されることから、稼働中の加湿装置のエレメントからのMVOCの発生状況についても調査を行い、汚染実態と、加湿装置の微生物汚染を防止するための対策等について検討した。 

 滴下浸透式加湿装置の衛生状況は調査前の予想よりも清浄であった。しかし、使い方によっては装置が汚染されることで、室内空気を在室者に影響を及ぼす恐れがある。供給水については、建築物衛生法では水道水水質基準に適合する水を使用することとされており、遵守されていれば衛生上問題はない。しかし、水の滞留による水質劣化や配管の老朽化、水道水由来のスケールの付着等に注意が必要である。

 加湿モジュールについては、今回の調査結果のように装置稼働中はモジュール表面が十分な加湿水で洗い流されており、衛生性が保持されたと推察する。しかし、シーズンオフに湿ったままのモジュールを装置内に放置してしまうと微生物が繁殖してしまう。星野の報告8)と同様に強制乾燥運転が有効であることが確認された。また、加湿モジュールは使用によって水道水のカルキ成分等が付着・固化することもあり、十分な加湿能力を達成できなくなるため、加湿モジュールの状態は重要である。

 ドレンパンなど汚れが堆積しやすい箇所への対策は、汚れの蓄積による悪臭、微生物の繁殖による揮発性有機化合物(MVOC)の発生、詰まり等の問題が生じる恐れがあり、建築物環境衛生管理基準で求められる「汚れの状況の点検」は重要と考える。今回の加湿モジュールの強制乾燥運転ならびにスライム抑制剤の使用は、加湿装置の衛生を保持する上で有効な手段であると考える。

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